Ayat-Origami

2-3 何のために生きるのか?

『ダンマパダ』(漢訳名『法句集』)は、原始仏教聖典のなかでも特に有名な経典です。現代語では、しばしば「真理のことば」と訳されております。以下は、そのなかの一節ですが、漢訳では「諸行無常」「一切皆苦」「諸法無我」と表現されているものの原典です。

ダンマパダ(法句集)277~279

つくられたもろもろのものは無常であると智慧をもって見るときには、もろもろの苦悩を離れる。これは清浄に至る道である。[諸行無常]
つくられたもろもろのものは苦悩であると智慧をもって見るときには、もろもろの苦悩を離れる。これは清浄に至る道である。[一切皆苦」
つくられたもろもろのものには実体がないと智慧をもって見るときには、もろもろの苦悩を離れる。これは清浄に至る道である。[諸法無我]

[ ]内は著者挿入


私たち日本人にとって、昔から、なかでも「諸行無常」が最も身近で馴染みのある言葉です。平家物語も、方丈記も、徒然草も、松下幸之助の生成発展の哲学も、みな、諸行無常がテーマです。「諸行」とはすべてのもの、「無常」とは常がない・移ろう・変わっていく・永遠はない・生あるものは必ず死にゆくもの・・・・ということです。「永遠なるもの」を求めてそこに美を感じる西洋人に対し、「移ろいゆくもの」にこそ美を感じる日本人の原点がそこにあります。
しかも、私たち日本人にとって、「移ろいゆくもの」とは決して虚無へと向かう否定の繰り返しではなく、必ず、新たな「再生」をも含む現実世界への肯定を含意するものでした。それは、「色即是空→空即是色」のごとく、現実世界から空の境地へ到達し、空の境地から再び現実世界へと還ってきて衆生の救済を説く観音さまの教えとも重なります。
次の「いろは歌」も、諸行無常の理(ことわり)を説いたものとして有名です。

『いろは歌』作者不詳

1 いろはにほへと ちりぬるを
2 わかよたれそ つねならむ
3 うゐのおくやま けふこえて
4 あさきゆめみし ゑひもせす
1 色はにほへど 散りぬるを
2 我が世たれぞ 常ならむ
3 有為の奥山  今日越えて
4 浅き夢見じ  酔ひもせず
1 花の色は鮮やかに映れども、やがてはすべて散りゆくもの
2 一体この世で誰が永遠でいられよう、誰も永遠ではいられない
3 苦に満ちたこの世界を、何のために生きるのか
4 はかない夢など見るまいよ、迷いに悩まされることもなく

次の一節は、涅槃経(ねはんきょう)のなかの有名な4句の偈(げ)です。釈迦が過去世において雪山童子(せっせんどうじ)として修行していたときに、羅刹(らせつ)に姿を変えた帝釈天からこの偈の前半を聞いて感動し、後半を聞くために自分の命を引き換えにしたといいます。そして、この偈を邦訳したものが、「いろは歌」であるといわれています。

『無常偈(むじょうげ)』(大般涅槃経)

1 諸行無常 しょぎょうむじょう
2 是生滅法 ぜしょうめっぽう
3 生滅滅已 しょうめつめつい
4 寂滅為楽 じゃくめついらく
1 すべての存在は移り変わる
2 是がこの生滅する世界の法である
3 生滅へのとらわれを滅し尽くして
4 寂滅を以って楽と為す

次の歌詞は、『いろは歌』『無常偈』を現代日本語に訳した、まさに「現代版 無常偈」といっていいかもしれません。何のために生きるのか?人生は一瞬一瞬が生きる意味であり、更には、人生そのものが一瞬で、その一人ひとりの一瞬が、また次の一瞬(=次の未来(来世))へと約束されているのです。
途中で、いのちを捨ててはいけません。私たちは、私たちの一瞬一瞬の行為の積み重ねに依って、将来誕生すべき未来(=次の未来)が、決定されていくのです。
1番では、月の雫に照らされながらわずかな救いを夢見て自己に執着していた私ですが、2番では、紺青に澄んだ明け方の陽光を浴びることに依って真実に目覚め、新たな生を生き直そうとする私の姿が描かれています。そこには、たとえ答えがみつからなくても、逞しく前向きに生きていく自信と決意が感じられます。
なお、「足下に咲いた花」は、蟻を踏まないようにいつも足下を気にしながら素足で歩いていた釈迦の姿を想起させます。きっと釈迦も、足元に咲いた花に、心を奪われたに違いありません。

秋元康 命は美しい (2014.10). 乃木坂46

1 月の雫を背に受けて
2 一枚の葉が風に揺れる
3 その手 放せば楽なのに
4 しがみつくのはなぜだろう
5 何のために生きるのか?
6 何度 問いかけてはみても
7 空の涯まで暗闇が黙り込む
8 夢を見られるなら この瞼を閉じよう
9 悩んでも やがて夜は明けてく
10 命は美しい
11 初めて気づいた日から
12 すべてのその悲しみ
13 消えて行くんだ
14 永遠ではないもの
15 花の儚さに似て
16 その一瞬 一瞬が
17 生きてる意味

18 地平線から差し込んだ
19 藍色の陽が語りかける
20 昨日 途中であきらめたこと
21 今日もう一度 始めよう
22 何のために生きてるか?
23 答え 見つからなくたって
24 目の前にある真実は一つだけ
25 それがしあわせだと教えられるよりも
26 足下に咲いた花を見つけろ!
27 命は逞しい
28 この世に生まれてから
29 どんなに傷ついても
30 立ち上がろうか
31 捨ててはいけないんだ
32 人は約束してる
33 みんな一人 そう一人
34 次の未来
35 命は美しい
36 初めて気づいた日から
37 すべてのその悲しみ
38 消えて行くんだ
39 永遠ではないもの
40 花の儚さに似て
41 その一瞬 一瞬が
42 生きてる意味

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