■般若心経とは何か
私たち日本人にとって、般若心経の「色即是空」はあまりにも有名なフレーズですが、その意味を説明できる人は、そうは多くない気がします。「色(=かたちあるもの)」と「空(=実体がないもの)」とは、一般的には正反対の概念で、本来は相容れないものです。この二つの概念を同一のものとして結びつけたところに、大乗仏教の恐るべき智慧が隠されています。西暦紀元前後のインドで大乗を名乗る仏教徒たちは、その生涯をかけて、無常・苦・無我を洞察する瞑想によって、そして、智慧の光に依り無明を破ることによって、言葉を超えた「空」の世界を垣間見ようと試みてきました。
ところが私たち日本人は、なぜ「色は空なり」と言えるのか、ほとんど疑問を抱かないまま誰もがごく自然に、「無の境地とはおそらくそのようなものであろう」と簡単に受け入れてしまいます。それはまるで、かつてのインドの仏教徒たちがその生涯をかけて体得した境地を、私たち日本人はそのまま種子(しゅうじ)として受け継いで、数百年の時と数千キロの空間を越えて生まれ変わってきているかのようでもあります。
般若心経が目指したものは何か、少しだけ、考えてみようと思います。
(履歴)
2017.05.01 1-1から1-10, 2-1から2-3, 3-1から3-2を掲示
2018.04.10 1-11を追記